葬送のフリーレンでフェルンとシュタルクがしそうな会話を作ってください


(夕方、焚き火の前)

シュタルク「今日はよく歩いたなぁ……。」

フェルン「歩いたのは皆です。」

シュタルク「いや、俺だけ荷物重くなかった?」

フェルン「気のせいです。」

シュタルク「絶対気のせいじゃない。途中から俺の荷物増えてたぞ。」

フェルン「フリーレン様が拾った変な魔法書です。」

シュタルク「あれ俺が持つことになったの!?」

フェルン「フリーレン様は『重い』と言っていました。」

シュタルク「いやいや、俺だって重いよ!」

フェルン「戦士ですから。」

(少し沈黙)

フェルン「でも。」

シュタルク「ん?」

フェルン「ちゃんと最後まで持ってくれましたね。」

シュタルク「まあ……途中で捨てたら怒られそうだったし。」

フェルン「怒ります。」

シュタルク「やっぱり。」

フェルン「……ありがとうございます。」

シュタルク「え?」

フェルン「聞こえませんでしたか?」

シュタルク「いや、聞こえたけど……。」

フェルン「なら二度は言いません。」

シュタルク「なんか今日、ちょっと優しくない?」

フェルン「気のせいです。」

フリーレン「……仲いいね。」

(街を出てしばらく歩いた昼下がり。道端で休憩中。)

フリーレン「この辺りに、髪が一日だけつやつやになる魔法が入った宝箱があるはずなんだ。」

シュタルク「またそんな微妙な魔法?」

フェルン「フリーレン様は、そういう魔法が大好きですから。」

フリーレン「微妙じゃないよ。千年以上前は結構人気だった。」

シュタルク「千年以上前の流行を言われても……。」

フリーレン「大丈夫。まだ使える。」

フェルン「問題は、宝箱が本物かどうかです。」

シュタルク「……嫌な予感しかしない。」

フリーレン「今回は本物だと思う。」

シュタルク「根拠は?」

フリーレン「勘。」

シュタルク「帰ろう。」

フェルン「賛成です。」

フリーレン「二人ともひどい。」

シュタルク「いや、毎回食われる人が言う台詞じゃないって。」

フェルン「今回は私が調べます。」

(フェルンが静かに魔法を使う。)

フェルン「……。」

シュタルク「どう?」

フェルン「中身は空です。」

シュタルク「……。」

フリーレン「……。」

フェルン「期待させてしまいましたね。」

シュタルク「なんかミミックのほうがまだ話として面白かった気がする。」

フリーレン「そういう日もあるよ。」

(街道。旅の途中。)

シュタルク「今日は天気いいな。」

フェルン「そうですね。このまま日が暮れる前に村まで着けそうです。」

(前方から一人の老人が歩いてくる。)

デンケン「ほう。」

フリーレン「あれ。」

デンケン「久しいな、フリーレン。」

フリーレン「デンケンじゃない。」

デンケン「まさかこんな街道で会うとはな。」

フリーレン「旅?」

デンケン「少し野暮用だ。お前は相変わらず旅を続けているようだな。」

フリーレン「うん。」

デンケン(フェルンとシュタルクに目を向ける。)

デンケン「こちらが、お前の仲間か。」

(軽く会釈する。)

デンケン「なるほど。」

シュタルク「な、何ですか。」

デンケン「いや、安心した。」

シュタルク「え?」

デンケン「フリーレン一人なら、道中で野垂れ死んでいても不思議ではない。」

フリーレン「ひどいな。」

フェルン「私もそう思います。」

フリーレン「フェルン?」

フェルン「違いましたか?」

フリーレン「……否定できない。」

デンケン「素直でよろしい。」

シュタルク「そんなにですか。」

デンケン「昔からだ。」

フリーレン「ちょっと寄り道が多いだけ。」

デンケン「旅とは寄り道を楽しむものだ。」

フェルン「ほどほどならそう思います。」

デンケン「だが、この娘が手綱を握っているなら安心だな。」

フリーレン「最近厳しいんだよ。」

フェルン「普通です。」

シュタルク「いや、結構厳しいと思う。」

フェルン「シュタルク様?」

シュタルク「……何でもありません。」

(デンケンが小さく笑う。)

デンケン「賑やかでいい旅だ。」

フリーレン「そうかな。」

デンケン「一人で歩く旅も悪くない。だが、誰かと歩く旅には別の価値がある。」

(フリーレンは少しだけ空を見上げる。)

フリーレン「……そうだね。」

デンケン「では、私は行く。」

フェルン「お気をつけて。」

シュタルク「また会えたらいいですね。」

デンケン「縁があれば、また会うだろう。」

(デンケンは静かに歩き去っていく。)

フリーレン「相変わらず渋いね。」

フェルン「フリーレン様のお知り合いには、落ち着いた方が多いですね。」

フリーレン「長く生きてると、自然とああなるのかも。」

シュタルク「じゃあフリーレンも?」

フェルン「……。」

三人は顔を見合わせ、小さく笑いながら再び街道を歩き始めた。

(途中でしゃべるミミックが登場)

街道脇の草むらに、古びた宝箱がぽつんと置かれている。

フリーレン「あ。」

フェルン「駄目です。」

フリーレン「まだ何もしてないよ。」

フェルン「どうせ開けます。」

フリーレン「もしかしたら百年に一度の魔法書かもしれない。」

シュタルク「いや、こんな道端に?」

フェルン「皆さん、人の話を聞いてください。」

フリーレンは迷いなく宝箱へ歩いていく。

箱に手を掛けた、その瞬間。

宝箱「ちょっと待て。」

四人の動きが止まる。

シュタルク「……しゃべった。」

フェルン「しゃべりましたね。」

フリーレン「珍しい。」

宝箱「珍しい、じゃない。」

宝箱「私はミミックだ。」

シュタルク「知ってたのかよ!」

フリーレン「うん。」

フェルン「それでも開けようとしたんですか?」

フリーレン「もしかしたら違うかもしれないし。」

ミミック「違わん。」

フリーレン「……。」

ミミック「百年この仕事をしているが、自己申告しても開けようとしたのはお前が初めてだ。」

シュタルク「そりゃそうだ!」

フェルン「つまり、自分でミミックだと名乗っているんですね。」

ミミック「誠実な接客を心掛けている。」

シュタルク「接客なのか?」

ミミック「騙して食べるのは性に合わん。」

フリーレン「いいミミックだ。」

ミミック「褒めても食う。」

フリーレン「そうなんだ。」

ミミック「どうする?」

フリーレン「開ける。」

フェルン「開けません。」

ミミック「意見が割れているな。」

シュタルク「本人に実況されてる……。」

フリーレン「お願い。」

フェルン「駄目です。」

ミミック「ちなみに今日は腹八分目だから、一人くらいなら食べても問題ない。」

ガバッ!

ミミックは勢いよく口を開き、フリーレンを丸ごと飲み込んだ。

フリーレン「むぐーーっ!」

シュタルク「結局食われた!」

ミミック「……。」

ミミック「うむ。」

シュタルク「何だよ、その間は。」

ミミック「思ったより落ち着いている。」

フリーレン(箱の中から)

「これ、意外と居心地いいかも。」

フェルン「出てきてください。」

ミミック「私も帰りたいので、早く引き取ってくれ。」

(街についてガリガリ君を食べる3人)

長い街道を歩き終えた三人は、ようやく町へたどり着いた。

シュタルク「あー、暑かった……。」

フェルン「今日は日差しが強かったですね。」

フリーレン「何か冷たいもの食べたい。」

シュタルク「珍しく意見が一致した。」

宿に荷物を置いた帰り道。

雑貨屋の前に置かれた冷凍ケースを見て、シュタルクが足を止める。

シュタルク「おっ、ガリガリ君売ってる!」

フリーレン「ガリガリ君?」

フェルン「氷菓ですね。」

シュタルク「安いし、暑い日には最高なんだよ。」

フリーレン「へぇ。」

三人は一本ずつ買う。

シュタルク「じゃあ、いただきます!」

ガリッ。

シュタルク「くぅー! 生き返る!」

フェルン「冷た……。」

フリーレン「……。」

ガリ。

ガリ。

フリーレン「これ、おいしい。」

シュタルク「だろ?」

フリーレン「外はシャリシャリ、中もシャリシャリ。」

フェルン「その感想は正しいですが、もう少し別の表現はないんですか。」

フリーレン「うーん……。」

もう一口かじる。

フリーレン「すごくシャリシャリ。」

フェルン「変わっていません。」

シュタルク「あはは!」

(そのとき。)

パキッ。

フリーレン「あ。」

棒を見つめたまま、動きが止まる。

シュタルク「どうした?」

フリーレン「当たり。」

シュタルク「えっ!?」

フェルン「そんなことがあるんですね。」

フリーレン「もう一本もらえる。」

シュタルク「運いいな!」

フリーレン「百年以上生きてるとね。」

フェルン「たぶん寿命は関係ありません。」

シュタルク「いや、そこは運だろ。」

フリーレン「じゃあ、もう一本食べてくる。」

フェルン「夕食が入らなくなります。」

フリーレン「大丈夫。」

フェルン「さっきもそう言っていました。」

フリーレン「今回は本当に大丈夫。」

フェルン「その台詞が一番信用できません。」

シュタルクは笑いながら、最後の一口をかじる。

シュタルク「こういう何でもない日って、結構好きなんだよな。」

フリーレン「うん。」

フェルン「そうですね。」

夕暮れの町を涼しい風が吹き抜ける。

三人はガリガリ君を片手に、宿へ向かってゆっくりと歩いていった。

(リッツカールトンに泊まる)

男性「失礼ですが、フリーレン様でしょうか。」

フリーレン「そうだけど。」

男性「やはり。実は当ホテルの記念行事で、歴史に名を残す魔法使いの方をご招待しておりまして……。」

シュタルク「ホテル?」

男性「本日は、リッツ・カールトンのスイートルームをご用意しております。」

フェルン「……え?」

シュタルク「リッツ・カールトン!?」

フリーレン「リッツ・カールトンって?」

フェルン「とても高級なホテルです。」

フリーレン「そうなんだ。」

男性「もちろん、ご同行のお二人もご一緒に。」

シュタルク「俺まで!?」


(リッツ・カールトンのロビー。)

豪華なシャンデリア。

磨き上げられた大理石の床。

静かに流れるピアノの演奏。

シュタルク(小声)

「場違いじゃないか、俺たち……。」

フェルン「私も少し緊張します。」

フリーレン「きれいな建物だね。」

シュタルク「その平常運転がすごいよ。」

(部屋のドアが開く。)

シュタルク「広っ!」

フェルン「リビングがあります……。」

フリーレン「お風呂も大きい。」

シュタルク「ベッド、何人寝られるんだこれ。」

フェルン「飛び込まないでくださいね。」

シュタルク「子どもじゃないって。」

フリーレン「こう?」

ぽすん。

フリーレンはベッドへゆっくり倒れ込む。

フリーレン「……。」

フェルン「フリーレン様。」

フリーレン「……。」

フェルン「寝ないでください。」

フリーレン「このベッド、私を眠らせようとしてくる。」

シュタルク「ベッドのせいじゃない。」

(窓のカーテンを開ける。)

町の夜景が一望できる。

シュタルク「すげぇ……。」

フェルン「本当にきれいですね。」

フリーレン「ヒンメルなら、夜景を見る前に部屋の調度品を全部褒めそう。」

シュタルク「なんか想像できる。」

フェルン「『この部屋に泊まれるなんて一生の思い出だね』と言いそうです。」

フリーレン「そして記念写真をいっぱい撮る。」

三人は思わず笑う。

(そのとき、ドアベルが鳴る。)

スタッフ「失礼いたします。ウェルカムスイーツをお持ちしました。」

テーブルの上に、美しく盛り付けられたデザートが並ぶ。

三人は夜景を眺めながらデザートを囲み、いつもの旅とは少し違う、贅沢で穏やかな一夜を過ごすのだった。

(翌朝・リッツ・カールトンのスイートルーム)

朝日が大きな窓から差し込む。

町並みが金色に照らされ、静かな一日が始まる。

シュタルク「ん……。」

目を覚ましたシュタルクは、ふかふかのベッドからゆっくり起き上がる。

シュタルク「……よく寝た。」

隣を見る。

フェルンはすでに身支度を終え、本を読んでいた。

シュタルク「おはよう。」

フェルン「おはようございます。」

シュタルク「フリーレンは?」

フェルンは無言で奥のベッドを指さす。

巨大な毛布が、小さく盛り上がっている。

シュタルク「ああ……。」

フェルン「予想どおりです。」

フェルンはベッドへ近づく。

フェルン「フリーレン様。」

返事はない。

フェルン「朝ですよ。」

毛布が少しだけ動く。

フリーレン「あと五十年……。」

シュタルク「長すぎる!」

フェルン「五分です。」

フリーレン「五十年。」

フェルン「五分。」

フリーレン「……。」

沈黙。

フェルン「朝食の時間が終わります。」

毛布がぴくりと動く。

フリーレン「朝食?」

フェルン「ホテルの朝食ビュッフェです。」

さらに毛布が動く。

シュタルク「効いてる。」

フェルン「焼きたてのパン。」

もぞもぞ。

フェルン「卵料理も、その場で作ってくださるそうです。」

フリーレンの顔が少しだけ毛布から出る。

フェルン「果物もあります。」

フリーレン「……。」

フェルン「それから。」

少し間を置く。

フェルン「デザートも。」

ガバッ!

フリーレンは勢いよく起き上がった。

フリーレン「行こう。」

シュタルク「食べ物には弱いなあ。」


(ホテルのレストラン)

窓際には朝日が差し込み、料理が美しく並んでいる。

焼きたてのクロワッサン。

色とりどりのサラダ。

オムレツ。

パンケーキ。

果物。

フリーレン「すごい。」

シュタルク「全部うまそう!」

フェルン「食べ切れる分だけ取りましょう。」

十分後。

シュタルク「……。」

フェルン「……。」

フリーレンの皿は、きれいに料理が積み上がっていた。

シュタルク「『食べ切れる分』って、これ全部?」

フリーレン「うん。」

フェルン「フリーレン様。」

フリーレン「大丈夫。」

フェルン「昨日も同じことを聞きました。」

フリーレン「今日は本当に大丈夫。」

シュタルク「昨日も聞いた。」

三人は笑いながら席に着く。

窓の外では、新しい一日の光が町を照らしていた。

今日もまた、三人の旅が始まる。

(一行は食事時間を前にして、セブンイレブンに立ち寄る)

夕日が街道を赤く染めていた。

シュタルク「そろそろ腹減ったな。」

フェルン「しかしこんな夕暮れにあいているお店があるかどうか。」

シュタルク「パンはまだ残っていたかな」

街道の先に、見慣れた看板が立っていた。

7-ELEVEN

シュタルク「……。」

フェルン「……。」

シュタルク「あるんだ。」

自動ドアが静かに開く。

♪ティロリン♪

店内は明るく、棚にはおにぎり、サンドイッチ、総菜、デザートが整然と並んでいた。

店員「いらっしゃいませ。」

三人は自然な足取りで店内へ入る。

シュタルク「誰も驚いてないな……。」

フリーレン「旅人はよく利用するからね。」

フェルンは弁当コーナーの前で立ち止まる。

フェルン「種類が多いですね。」

フリーレン「期間限定の商品はすぐなくなる。」

シュタルク「魔導書みたいな言い方するな。」

フリーレンは迷うことなく棚へ向かう。

フェルン「お目当てがあるんですか。」

フリーレン「金のハンバーグ。」

シュタルク「そんな真剣な顔で言うことか?」

その横でフェルンはデザートを見つめていた。

フェルン「……新商品のプリン。」

シュタルク「お前もか。」

三人が商品を選んでいると、レジ横に小さな張り紙が目に入った。

『ただいま700円ごとに一回、くじが引けます。』

フリーレンの足が止まった。

フリーレン「もう少し買えば、くじが引ける。」

フリーレンは買い物かごを見つめながら、指折り数えていた。

フリーレン「あと百八十円。」

フェルン「くじのためだけに買い足すんですか。」

フリーレン「うん。」

シュタルク「そんなことしてるから、毎回荷物が増えるんだぞ。」

その横で、シュタルクはカップ麺の棚の前で立ち止まっていた。

シュタルク「おっ。」

真っ赤なパッケージを手に取る。

シュタルク「蒙古タンメン中本。」

フェルン「ご存じなんですか。」

シュタルク「前に旅の戦士から聞いた。」

「『辛いけどうまい。食べ切れたら一人前。』って。」

フリーレン「伝説級だね。」

シュタルク「そんなにか?」

レジへ向かう三人。

数分後。

店の外の休憩スペース。

シュタルクは意気揚々と中本のカップ麺をすすった。

沈黙。

額に汗が浮かぶ。

フェルン「大丈夫ですか。」

シュタルク「……辛ぇ。」

もう一口。

シュタルク「でも……。」

さらにもう一口。

シュタルク「うまい。」

フェルン「食べるのをやめませんね。」

シュタルク「悔しいけど、止まらねぇ。」

その様子を見ていたフリーレンが、小さくつぶやく。

フリーレン「人類は、ときどき理解できないものを発明する。」

フェルン「千年以上生きても理解できませんか。」

フリーレン「うん。」

「でも、おいしそう。」

シュタルクは黙ってカップを差し出した。

フリーレンはスープを一口飲む。

一瞬、表情が止まる。

フリーレン「……。」

フリーレンは揚げ物を買う

シュタルクが汗を拭いている間に、フリーレンはレジ横へ歩いていった。

ホットスナックのケースをじっと見つめる。

店員「ご注文がお決まりでしたら、お申し付けください。」

フリーレン「これと。」

「これ。」

「あと、それ。」

店員が手際よく袋に入れていく。

フェルン「……全部揚げ物ですね。」

フリーレン「うん。」

シュタルク「そんなに食えるのか?」

フリーレン「食べ比べ。」

店の外。

フリーレンはまず、ななチキを一口。

サクッ。

しばらく無言で噛みしめる。

フェルン「どうですか。」

フリーレン「……。」

さらにもう一口。

フリーレン「これ、おいしい。」

続いてアメリカンドッグ。

最後にコロッケ。

食べ終えたフリーレンは満足そうにうなずいた。

シュタルク「結論は?」

フリーレン「どれもおいしい。」

フェルン「食べ比べになっていません。」

フリーレン「そうかな。」

フリーレンは少し考え、

フリーレン「でも、また来るなら、ななチキかな。」

シュタルク「千年生きた大魔法使いの結論がそれか。」

フリーレン「千年生きても、おいしいものはおいしいからね。」

フェルンは小さくため息をつきながらも、少し笑っていた。

・フェルンはおにぎりが高くなったことを嘆く

三人は店のイートインスペースで夕食を広げる。

シュタルクは辛さと格闘しながら中本のカップ麺をすすり、

フリーレンは満足そうにななチキを頬張っている。

その隣で、フェルンはおにぎりを見つめたまま動かない。

シュタルク「どうした?」

フェルン「……高くなりました。」

シュタルク「何が?」

フェルンは値札を見せる。

フェルン「おにぎりです。」

フェルン「少し前なら百円くらいで買えたものが、今はずいぶん高くなっています。」

シュタルクも値札を見てうなずく。

シュタルク「言われてみれば。」

フリーレンは首をかしげた。

フリーレン「百円?」

フェルン「昔はよくセールもやっていたんですよ。」

フリーレン「へぇ。」

フェルンは少し遠い目をする。

フェルン「鮭も、ツナマヨも、梅も。」

「百円を握りしめて来れば、大体どうにかなった時代がありました。」

シュタルク「そんな昔だったか?」

フェルン「そんな昔です。」

フリーレンは食べ終えたななチキの袋を丸めながら、静かに言った。

フリーレン「人間って。」

「魔王を倒しても、おにぎりは高くなるんだね。」

一瞬、沈黙が流れる。

シュタルク「そこはどうにもならなかったみたいだな。」

フェルンは小さくため息をつき、おにぎりを一口かじった。

・店の外

店を出ると、入口の脇に数人のヤンキーがうんこ座りをしていた。

金髪。革ジャン。眉をしかめながら紙コップのコーヒーを飲んでいる。

フリーレン「あ。」

一人のヤンキーが立ち上がる。

ヤンキー「おっ。」

「フリーレンさんじゃないっすか!」

深々と頭を下げる。

シュタルク「知り合い!?」

フリーレン「うん。」

「八十年くらい前、この子のおじいちゃんを魔物から助けた。」

ヤンキー「じいちゃんから何百回も聞かされました!」

「『白髪の魔法使いには絶対失礼なことするな』って!」

後ろにいた仲間たちも慌てて立ち上がる。

ヤンキーたち「お疲れ様っす!」

フェルン「礼儀正しいですね。」

ヤンキー「先輩、これ持ってってください。」

レジ袋を差し出す。

中には、さっきフリーレンが買おうか迷って棚へ戻した、期間限定のシュークリームが入っていた。

フリーレン「いいの?」

ヤンキー「恩返しっす。」

「うちの家訓なんで。」

フリーレンは少しだけ笑って受け取る。

フリーレン「ありがとう。」

ヤンキーたちは再び頭を下げた。

三人が歩き出してしばらくすると、シュタルクが口を開く。

シュタルク「ヤンキーって、あんな感じなのか?」

フェルン「少なくとも、あの方々は違いましたね。」

フリーレンはシュークリームの袋を見つめながら、小さくつぶやく。

フリーレン「人間は面白いね。」

「見た目より、昔の約束を大事にする人が結構いる。」

(夕暮れの街道)

セブンイレブンの明かりが少しずつ遠ざかっていく。

虫の声だけが響く静かな森の入口。

その大きなクスノキの根元に――

いた。

灰色で、丸くて、大きな生き物。

シュタルク「……。」

フェルン「……。」

シュタルク「いるな。」

フェルン「いますね。」

大きな生き物は、二人をちらりと見たあと、大きくあくびをした。

フリーレン「あ、トトロだ。」

シュタルク「知ってるの!?」

フリーレン「昔、一緒に昼寝したことがある。」

トトロはフリーレンを見ると、短く鳴いた。

「トォー。」

フリーレンも軽く手を振る。

フリーレン「久しぶり。」

トトロは木の実を一つ差し出した。

フリーレンは受け取る。

代わりに、さっきヤンキーにもらったシュークリームを半分に割って差し出した。

トトロは興味深そうに匂いをかぎ、一口。

しばらく目を丸くしたあと、満足そうに何度もうなずいた。

シュタルク「甘い物、好きなんだ。」

フェルン「知りたくなかった事実が増えました。」

そのとき、森の奥から一台の猫バスが軽快な音を立ててやってきた。

プシューッ。

トトロは猫バスに飛び乗ると、二人に向かって短く手を振る。

「トォー!」

猫バスは夕暮れの森へ走り去り、あっという間に見えなくなった。

しばらく沈黙が流れる。

シュタルク「……今の、誰にも話しても信じてもらえないよな。」

フリーレン「大丈夫。」

シュタルク「何が?」

フリーレン「私も千年くらい前は、誰も信じてくれなかったから。」

フェルン「千年前から信じてもらえなかったんですね。」

森を抜けると、大きな交差点に出た。

角には落ち着いた色合いの建物。

緑色のロゴ。

STARBUCKS COFFEE

シュタルク「今日は文明が多い日だな……。」

フェルン「少し休憩しましょう。」

店内は穏やかな音楽が流れ、旅人や冒険者たちが思い思いにくつろいでいた。

店員「店内でご利用ですか。」

フリーレン「うん。」

三人はカウンターの前に並ぶ。

店員「ご注文をどうぞ。」

フェルン「アイスカフェラテをお願いします。」

シュタルク「俺は抹茶クリームフラペチーノ。」

フェルン「意外ですね。」

シュタルク「疲れた日は甘いのが飲みたくなるんだよ。」

店員がフリーレンを見る。

店員「お客様は?」

フリーレンはメニューをじっと見つめている。

一分。

二分。

三分。

フェルン「決まりませんか。」

フリーレン「種類が多い。」

シュタルク「魔導書は一瞬で選ぶのに。」

さらにしばらく考えた末、フリーレンは口を開いた。

フリーレン「おすすめで。」

店員「かしこまりました。」

席に着く。

しばらくして三人の飲み物が運ばれてきた。

フリーレンは紙コップを見つめる。

名前の欄には、太いマジックでこう書かれていた。

『フリーレン様』

フリーレン「……。」

フェルン「どうしました。」

フリーレン「千年以上生きてきたけど。」

「紙コップに名前を書いてもらったのは初めて。」

そう言って少しだけうれしそうに笑った。

シュタルク「そこなんだ。」

日もすっかり暮れた。

街道の先、谷あいにひときわ明るい建物が見えてくる。

赤い橋。

提灯の灯り。

巨大な湯屋。

看板には大きく、

「油屋」

と書かれていた。

シュタルク「今日はここか。」

フェルン「……もう驚きません。」

フリーレン「温泉が気持ちいいんだよ。」

三人は橋を渡る。

番台では蛙の番頭が帳簿をめくっていた。

番頭「いらっしゃいませ。」

フリーレン「三人。」

番頭「ご予約のお名前を。」

フリーレン「フリーレン。」

番頭は帳簿をめくる。

番頭「フリーレン様……ございました。」

「千年前から常連のお客様ですね。」

シュタルク「千年前!?」

フリーレン「昔、ヒンメルたちと泊まった。」

フェルン「そんな昔から営業しているんですか。」

番頭「当館は年中無休でございます。」

部屋へ案内される途中、湯気の向こうをさまざまな神様が行き交っていく。

誰一人として、エルフや人間が歩いていることを気にしていない。

シュタルク「ここ、何でもありだな……。」

部屋に着くと、窓の外には大浴場が見えた。

フリーレンは荷物を置くなり立ち上がる。

フリーレン「温泉行こう。」

フェルン「荷ほどきは。」

フリーレン「あとで。」

シュタルク「ずいぶん楽しみにしてたんだな。」

フリーレンは少しだけ考えてから答えた。

フリーレン「ここの露天風呂、四百年ぶりだから。」

フェルン「『久しぶり』の尺度が毎回おかしいですね。」

そのとき、仲居が部屋へやって来た。

仲居「お夜食に金平糖をご用意いたしました。」

フリーレンの目が少しだけ輝く。

フリーレン「……温泉はあとでもいい。」

シュタルク「前言撤回が早すぎる。」

フェルンは小さくため息をつきながら、お茶を三人分注ぎ始めた。

夕食を終えた三人は、油屋の廊下をのんびり歩いていた。

窓の外では、湯気が夜空へ立ちのぼっている。

そのとき。

黒い影が音もなく廊下を横切った。

白い仮面。

細長い体。

カオナシだった。

シュタルク「……。」

フェルン「……。」

シュタルク「普通に歩いてるな。」

フリーレン「散歩中だね。」

カオナシは三人の前で立ち止まる。

しばらく無言。

やがて懐から何かを取り出した。

チャリン。

セブンイレブンのレシートだった。

フェルン「……。」

レシートには、

『ななチキ 1点』

『金のハンバーグ 1点』

『アイスコーヒー L』

と印字されている。

シュタルク「さっき行ってたのか。」

カオナシは静かにうなずく。

さらにポケットから、スターバックスの紙袋を取り出した。

フリーレン「スタバも。」

カオナシはもう一度うなずく。

フェルン「ずいぶん現代的な生活ですね。」

しばらく沈黙が流れる。

やがてカオナシは紙袋の中から一つのスコーンを取り出し、フリーレンへ差し出した。

フリーレン「くれるの?」

コクリ。

フリーレンは受け取り、一口かじる。

フリーレン「おいしい。」

カオナシは満足そうに小さくうなずくと、そのまま廊下の向こうへ歩いていった。

シュタルク「最後まで一言もしゃべらなかったな。」

フェルン「でも、レシートだけで一日の行動が全部分かりました。」

フリーレン「旅人同士だからね。」

「なんとなく分かる。」

カオナシが角を曲がる。

三人も何となくそのあとを歩いた。

廊下の先には、自動販売機が一台だけぽつんと置かれていた。

シュタルク「……。」

フェルン「油屋にもあるんですね。」

フリーレン「あるよ。」

シュタルク「何で?」

フリーレン「便利だから。」

それ以上の説明はなかった。

カオナシは財布を取り出す。

小銭を入れ、

ガコン。

温かい缶コーヒーが一本落ちてきた。

両手で缶を持ち、しばらく温める。

フェルン「飲まないんですね。」

カオナシは首を横に振る。

すると、向こうから小さな煤だらけの影が何体も駆け寄ってきた。

ススワタリだった。

カオナシは缶コーヒーを一本差し出す。

ススワタリたちは嬉しそうに缶を囲み、みんなで順番に温まっている。

シュタルク「飲むんじゃないのか。」

フリーレン「寒い夜は、ああして湯たんぽ代わりにするんだよ。」

フェルン「初めて知りました。」

カオナシは満足そうにその様子を眺めると、静かに歩き去っていく。

その背中を見送りながら、シュタルクがぽつりと言った。

シュタルク「なんか今日は。」

「誰も戦わないな。」

フリーレンは缶コーヒーの自動販売機を眺めたまま答えた。

フリーレン「そういう旅の日もあるよ。」

「魔物がいない日は、世界の変なところがよく見えるからね。」

三人は湯気の立ちのぼる廊下を歩き、露天風呂へ向かっていった。

(油屋・露天風呂)

夜風が心地よく吹き抜ける。

露天風呂から見上げる空には、満天の星が広がっていた。

湯船には、さまざまな神様や旅人が静かにつかっている。

誰も互いを気にしない。

それが油屋の日常だった。

フリーレンは肩まで湯につかり、小さく息をつく。

フリーレン「……生き返る。」

少し離れた湯船では、シュタルクも大きく伸びをしていた。

シュタルク「中本食ったあとに温泉は効くな。」

フリーレン「汗かいたもんね。」

シュタルク「汗しか出なかった。」

その頃、フェルンは露天風呂の端にある瓶入り牛乳のケースを見つけていた。

一本取り出し、腰に手を当てる。

ゴク、ゴク、ゴク。

一気に飲み干す。

シュタルク「風呂上がりじゃなくても飲むんだ。」

フェルン「こういうものは、見つけたら飲みます。」

フリーレンも一本手に取る。

ラベルを見る。

「コーヒー牛乳」

フリーレン「これ、おいしい?」

フェルン「おすすめです。」

フリーレンは一口飲む。

少し考える。

もう一口飲む。

フリーレン「……これは危険。」

シュタルク「何が?」

フリーレン「毎日飲みたくなる。」

そのとき。

露天風呂の岩陰から、ひょこっとカオナシが顔を出した。

両手には、きれいにたたまれた新しいタオル。

無言のまま、フリーレンたちの前に置く。

フェルン「ありがとうございます。」

カオナシは軽く会釈すると、また湯気の向こうへ歩いていった。

シュタルク「あいつ、本当にいいやつだな。」

フリーレン「うん。」

「接客が板についてる。」

湯気の向こうで、湯船につかる神様たちの笑い声が聞こえる。

三人はしばらく何も話さず、静かな温泉の時間を楽しんだ。

湯気の向こうから、誰かの満足そうな声が聞こえてきた。

「……実にいい湯だ。」

シュタルクがそちらを見る。

シュタルク「あれ?」

露天風呂の一角で、一人の紳士が静かに湯につかっていた。

背筋はぴんと伸び、丸いサングラスを外して湯桶の上に置いている。

ムスカだった。

フェルン「知り合いですか。」

フリーレン「飛行石を探していた人。」

シュタルク「そんな説明でいいのか。」

ムスカは三人に気づくと、軽く会釈した。

ムスカ「旅の疲れは、温泉に限る。」

フリーレン「分かる。」

二人は妙に意気投合していた。

ムスカは湯船に肩までつかり、夜空を見上げる。

ムスカ「空から世界を眺めるのもいいが。」

「たまには地上で、ゆっくり過ごすのも悪くない。」

シュタルク「なんか今日は穏やかだな。」

フェルン「湯あたりすると、人は丸くなるのでしょうか。」

そのとき、露天風呂の桶が一つ、ぷかぷかと流れてきた。

ムスカは何気なく手を伸ばして受け止める。

ムスカ「危ない。」

その一言だけ言って、近くの子どもの神様へ桶を返した。

フリーレン「親切。」

シュタルク「さっきからみんな平和すぎるだろ。」

湯気がふわりと立ちのぼる。

今夜の油屋には、争いも冒険もなかった。

あるのは、温泉と、静かな夜だけだった。

(翌朝・油屋 大広間)

朝日が障子越しに差し込む。

大広間には長い料理台が並び、和食も洋食も所狭しと並べられていた。

『朝食バイキング』

シュタルク「おぉ……。」

フェルン「種類がすごいですね。」

フリーレンは料理を一通り見渡す。

焼き鮭。

だし巻き卵。

湯豆腐。

クロワッサン。

カレー。

フレンチトースト。

フリーレン「迷う。」

フェルン「昨日スタバでも同じことを言っていました。」

シュタルクは迷わず皿を持つ。

シュタルク「こういうときは全部ちょっとずつだ。」

フェルンは野菜を丁寧によそい、焼き魚と味噌汁を添える。

一方、フリーレンは黙々と歩き回っていた。

フェルン「何を探しているんですか。」

フリーレン「温泉卵。」

「朝は必ず食べたい。」

ようやく見つけると、少しだけ表情が緩んだ。

席へ戻る。

三人が食べ始めると、隣の席に見覚えのある人物が座っていた。

ムスカだった。

白い皿の上には、

サラダ。

ヨーグルト。

グラノーラ。

ゆで卵。

シュタルク「健康的だな。」

ムスカはナプキンで口元を拭き、静かに答える。

ムスカ「朝食は一日の基礎だからね。」

その向かいでは、カオナシが無言で山盛りのカレーを食べている。

さらにその隣では、トトロが山盛りのどんぐりを嬉しそうに頬張っていた。

フェルン「……誰も、この組み合わせを不思議に思わないんですね。」

フリーレンは温泉卵をご飯にのせながら言う。

フリーレン「旅館の朝食って。」

「こういうものだから。」

シュタルク「いや、違うと思う。」

そのとき館内放送が流れた。

『本日の朝食は午前十時までとなります。お食べ忘れのないようお願いいたします。』

フリーレンは顔を上げる。

フリーレン「フェルン。」

フェルン「何ですか。」

フリーレン「あと一周してくる。」

フェルン「最初からそのつもりでしたね。」

フリーレンは小さくうなずき、再び料理台へ向かって歩き出した。

フリーレンが二周目の料理を選んでいる間、シュタルクはパンのコーナーを眺めていた。

食パン。

クロワッサン。

ロールパン。

バゲット。

一通り見渡したあと、小さくつぶやく。

シュタルク「ラピュタパンはないんだな。」

フェルン「ラピュタパン?」

シュタルク「ほら、目玉焼きがのったあのパン。」

すると、後ろから落ち着いた声が聞こえた。

ムスカ「申し訳ない。」

三人が振り向く。

ムスカは少しだけ肩をすくめた。

ムスカ「今朝は品切れだ。」

シュタルク「そこなんだ。」

ムスカ「昨日、パズーが三人前食べてしまってね。」

フリーレン「それは仕方ない。」

フェルン「納得するんですね。」

そのとき、厨房の奥から料理長が顔を出した。

料理長「焼き上がりました! ラピュタパン追加でございます!」

会場が少しだけざわつく。

ムスカは静かに立ち上がった。

ムスカ「失礼。」

フリーレンも立ち上がる。

フリーレン「行こう。」

シュタルク「なんで張り合うんだよ!」

朝食会場では、ラピュタパンを求める静かな列ができ始めていた。

朝食を終え、荷物をまとめる。

油屋の玄関には、朝の澄んだ空気が流れていた。

番頭「ご宿泊ありがとうございました。」

フリーレン「お世話になりました。」

番頭が鍵を受け取り、深々と頭を下げる。

番頭「またのお越しをお待ちしております。」

フリーレン「たぶん、四百年後くらい。」

番頭「いつでもお待ちしております。」

シュタルク「その返しも慣れてるな。」

三人は赤い橋を渡る。

振り返ると、朝日に照らされた油屋が湯気の向こうに静かに佇んでいた。

橋のたもとでは、カオナシが手を振っている。

無言のまま、小さく会釈する。

フリーレンも軽く手を振り返した。

フリーレン「元気でね。」

カオナシはゆっくりとうなずいた。

その隣では、トトロがどんぐりを抱えたまま、のんびりとこちらを見送っている。

さらに少し離れた場所では、ムスカが新聞を読みながらベンチでコーヒーを飲んでいた。

三人に気づくと、カップを少し持ち上げて挨拶をする。

ムスカ「よい旅を。」

フリーレン「ありがとう。」

シュタルク「なんか普通にいい人だったな。」

フェルン「温泉の効能でしょうか。」

橋を渡り切る。

フリーレンが一度だけ振り返ると、そこにあったはずの油屋は、朝霧の中へ溶けるように姿を消していた。

シュタルク「……あれ?」

フェルン「なくなりました。」

フリーレンは少しも驚かず、帽子をかぶり直す。

フリーレン「また縁があれば会えるよ。」

三人は街道へ戻る。

新しい寄り道が、またどこかで待っている気がしながら。

帽子をかぶり、トランクを片手にした男が街道を歩いてくる。

寅さん「よう、旅の人。」

シュタルク「また旅人だ。」

男は三人の前で立ち止まり、にっと笑う。

寅さん「旅はいいねぇ。知らねえ景色に、知らねえ人。」

フリーレン「うん。」

寅さん「でもな、一番面白いのは、何度も同じ場所へ帰ることなんだ。」

フリーレンは少し考える。

フリーレン「私は千年くらい旅してるけど、帰る場所ってあまりないな。」

寅さん「だったら作りゃいい。」

「帰る場所ってのは、見つけるもんじゃなくて、誰かが待ってる場所なんだからよ。」

やがて寅さんは笑ってトランクを持ち直す。

寅さん「じゃあな。縁がありゃ、またどっかで会うさ。」

そう言って街道の向こうへ歩いていく。

シュタルク「名前、聞きそびれたな。」

遠くから声だけが返ってきた。

寅さん「俺かい?」

「姓は車、名は寅次郎!」

「人呼んで――フーテンの寅ってね!」

そのまま口笛を吹きながら去っていく。

フリーレン「また会えそうな気がする。」

フェルン「そういう人ですね。」

三人は再び街道を歩き始めた。

街道を歩いていると、土手の上で大きなおにぎりを頬張っている男がいた。

腹巻き姿。

風呂敷包みを隣に置いている。

裸の大将「うまいんだな。」

シュタルク「また旅人か。」

男は三人に気づくと、にっこり笑った。

裸の大将「お腹すいてるんだな?」

風呂敷を開く。

中には、握りたてのおにぎりがぎっしり並んでいた。

フェルン「こんなに。」

裸の大将「みんなで食べるんだな。」

フリーレンは鮭のおにぎりを受け取る。

一口食べる。

フリーレン「おいしい。」

裸の大将「お腹いっぱいになると、人はちょっと優しくなれるんだな。」

シュタルクは二つ目のおにぎりに手を伸ばす。

シュタルク「それは分かる。」

フェルンも静かにうなずいた。

食べ終わると、裸の大将は満足そうに空を見上げる。

裸の大将「旅ってのは、お腹が減るんだな。」

フリーレン「うん。」「だから寄り道が多くなる。」

シュタルク「この旅、寄り道しかしてないけどな。」

三人が立ち上がると、裸の大将は手を振った。

裸の大将「またどこかで会うんだな。」

フリーレン「ありがとう。」

街道を歩き出した三人の背中を見送りながら、裸の大将は最後のおにぎりをほおばった。

裸の大将「やっぱり、おにぎりはうまいんだな。」

黒い学ラン。リーゼント。そして、全身が金属。

フリーレン「メカ沢だ。」

シュタルク「知ってるの!?」

メカ沢は無言で軽く会釈した。

カシャン。

関節が小さく鳴る。

沈黙。

風だけが吹く。

シュタルク「誰か説明してくれよ!」

フリーレン「昔からあんな感じだよ。」

シュタルク「『昔から』で済ませるな!」

メカ沢は街道脇のベンチへ向かう。

腰掛けようとして一瞬止まった。

ベンチを手で軽く押す。

強度を確認してから、静かに座る。

フェルン「意外と気遣いのできる方ですね。」

メカ沢は小さくうなずく。

カシャン。

なぜか言いたいことは伝わった気がした。

フリーレンは帽子をかぶり直す。

フリーレン
「相変わらず元気そうでよかった。」

メカ沢は親指を立てる。

カシャン。

そのまま夕日の方へ歩いていった。

シュタルク
「結局、何者だったんだ……。」

フリーレン
「いい人だよ。」

シュタルク
「そこは最初から分かってたんだよ!」

三人は再び歩き始める。

背後では、メカ沢の足音だけが規則正しく響いていた。

カシャン、カシャン。

ドトール。

シュタルク「また現代だ。」

フリーレン「休憩しよう。」

三人はアイスコーヒーとミラノサンドを注文し、窓際の席に座った。

しばらくすると、入口のベルが鳴る。

デンケン「ほう。」

白髪の老魔法使いが店内を見回し、フリーレンに気付いた。

フリーレン「デンケン。」

デンケン「隣、いいか。」

「もちろん。」

デンケンはブレンドコーヒーを持って席に着く。

しばらく誰も話さない。

コーヒーを一口。

デンケン「……旅はどうだ。」

フリーレン「セブンイレブンに寄った。」

デンケン「うむ。」

シュタルク「否定しないんだ。」

フリーレン「期間限定のプリンを食べた。」

デンケン「それは運が良かったな。」

フェルン「そこも通じるんですね。」

フリーレン「そのあと油屋に泊まった。」

デンケン「湯は相変わらず良かったか。」

フリーレン「コーヒー牛乳がおいしかった。」

デンケン「分かる。」

シュタルク「分かるじゃないんですよ。」

シュタルクは頭を抱えた。

シュタルク「何なんだ、この世界……。」

デンケンはコーヒーを置いて静かに言う。

デンケン「長く生きているとな。」

「世界には、説明しない方が面白いことがある。」

フリーレンは小さくうなずく。

フリーレン「うん。」

「メカ沢にも会った。」

デンケンの手が一瞬止まる。

デンケン「……あやつは元気だったか。」

フリーレン「ベンチの強度を確認してた。」

デンケンは満足そうに微笑んだ。

デンケン「変わらんな。」

シュタルクは勢いよく立ち上がる。

シュタルク「そこだけ反応が普通なの、おかしいだろ!」

店内に静かな笑いが広がる。

デンケンは最後の一口を飲み干すと席を立った。

デンケン「では、またどこかの喫茶店で。」

フリーレン「うん。また。」

デンケンは会計を済ませ、何事もなかったように店を出ていった。

フェルン「……本当に偶然だったのでしょうか。」

フリーレン「デンケンとは、だいたい喫茶店で会う。」

シュタルク「そんな習性のある魔法使い、初めて聞いたよ。」

ドトールを出る。

午後の日差しは少しだけ柔らかくなっていた。

シュタルク「今日は休憩ばっかりしてるな。」

フェルン「ここまで来ると、旅というより散歩です。」

フリーレン「散歩も旅の一部だよ。」

街道はゆるやかな坂道になる。

鳥の声。

風に揺れる草。

久しぶりに、何も起きない時間が流れた。

シュタルク「……なんか逆に落ち着かねぇ。」

フェルン「分かります。」

「このまま平和に終わる気がしません。」

フリーレンは少しだけ笑う。

街道を進んでいると、大きな案内板が立っていた。

「→ チームラボ」

シュタルク「なんであるんだよ。」

フリーレン「入ろう。」

三人は吸い込まれるように館内へ入った。

部屋は真っ暗だった。

次の瞬間。

壁一面に花が咲く。

床を歩くたび、水面の光が静かに揺れた。

フェルン「……きれいです。」

シュタルク「魔法じゃないんだよな?」

フリーレン「たぶん違う。」

色とりどりの蝶が三人の周りを飛び回る。

フリーレンは一匹を指先で追いかける。

蝶は光になって消え、別の場所でまた生まれた。

フリーレン「不思議な魔法だね。」

フェルン「だから魔法ではありません。」

次の部屋。

天井いっぱいに無数のランプが吊るされていた。

光がゆっくり色を変え、果てしなく鏡に映り込む。

フリーレンはしばらく立ち尽くす。

シュタルク「珍しいな。」

「そんなに見入るなんて。」

フリーレン

「人間って、光で遊ぶのが上手になったんだね。」

そのまま十分ほど誰もしゃべらない。

ただ光だけが変わり続ける。

出口が近づく。

最後の部屋でフリーレンが立ち止まった。

フリーレン

「昔、人間の魔法使いは『光るだけの魔法』をよく作ってた。」

「役に立たないって笑われてたけど。」

フェルンが静かに尋ねる。

フェルン

「先生は、どう思いますか。」

フリーレンは光の花畑を見渡す。

フリーレン

「役に立たなくても。」

「見てるだけで嬉しくなるなら、それで十分なんだと思う。」

三人は出口をくぐる。

シュタルク

「今日は珍しく、誰にも会わなかったな。」

フェルン

「たまには、こういう寄り道も悪くありません。」

フリーレンは満足そうにうなずいた。

フリーレン

「うん。」

「また百年後くらいに来よう。」

遠くで誰かがしゃがみ込んでいる。

近づくと、見覚えのある後ろ姿だった。

リヒター「……。」

地面にレンガを積んでいる。

シュタルク「リヒター?」

リヒターが振り返る。

リヒター「おう。」

フリーレン「何してるの?」

リヒター「ピザ窯を作ってる。」

沈黙。

シュタルク「ここ街道だぞ!」

リヒター「いい場所なんだよ。」

「風向きもいいし。」

リヒターは慣れた手つきでレンガを積み上げていく。

魔法で土台を水平に整え、最後の一枚を載せた。

フェルン「本格的ですね。」

リヒター「何事も道具が大事だ。」

一時間後。

窯に火が入る。

リヒターは生地を伸ばし、トマトソースを塗り、チーズをたっぷり載せた。

数分後。

香ばしい匂いが森に広がる。

リヒター「食うか。」

四人は切り分けられたピザを受け取る。

シュタルク「うまっ!」

フェルン「お店みたいです。」

フリーレンも一口食べる。

フリーレン「おいしい。」

リヒターは満足そうに腕を組んだ。

リヒター「だろ。」

「魔法もいいが、窯は裏切らねえ。」

食べ終わると、リヒターは窯を眺めながら言った。

リヒター「これ、置いていく。」

シュタルク「置いていくの!?」

リヒター「次に通る誰かが使えばいい。」

フリーレンは静かにうなずいた。

フリーレン「いいね。」

「百年後に来たら、もっと味が出てそう。」

リヒター「その頃には、また焼きに来るさ。」

四人は笑い、街道にぽつんと残されたピザ窯を背に、それぞれの旅を続けた。

しばらく歩いたところで、フリーレンが立ち止まった。

フリーレン「帽子。」

フェルン「忘れたんですか。」

フリーレン「ピザ窯に置いてきた。」

シュタルク「なんでピザ窯に置くんだよ。」

三人は来た道を戻る。

街道の先から、誰かの話し声が聞こえてきた。

デンケン
「火力は悪くない。」

リヒター
「だろ。」

三人は物陰からそっとのぞく。

リヒターが窯の前で腕を組み、デンケンが焼き上がったピザを眺めていた。

デンケン
「もう少し薪を奥へ寄せると、耳まで均一に焼ける。」

リヒター
「ほう。」

リヒターは素直に薪を動かす。もう一枚焼く。

デンケンが一口食べる。静かにうなずく。

デンケン
「よくなった。」

リヒター
「さすが年の功だな。」

デンケン
「三百年ほど、窯焼きパンを焼いていたことがあってな。」

シュタルク「そんな設定あった!?」

フリーレン
「あるよ。」

シュタルク
「先生まで乗るな!」

フェルンは帽子を拾い上げる。

誰にも気付かれていない。

帰ろうとした、そのとき。

デンケン
「そこにいるんだろう。」

三人がゆっくり姿を現す。

フリーレン
「デンケン。」

デンケン
「帽子だろう。」

フリーレンはこくりとうなずく。

リヒターは焼きたてのピザを切り分けた。

リヒター
「一枚食ってけ。」

フリーレンは迷わず一切れ受け取る。

フリーレン
「うん、おいしい。」

デンケンも満足そうにコーヒーをすすった。

シュタルク
「……そのコーヒー、どこから出した?」

デンケンは答えない。

ただ静かにコーヒーを飲み、焼き上がるピザを眺めていた。

その姿は、まるで何十年も前から、ずっとこの街道のピザ窯に通っている常連のようだった。

歩き続けるうちに、少し疲れが出てきた。

街道の角に、落ち着いた雰囲気の店が見える。

Afternoon Tea TEAROOM

シュタルク「また現代だ。」

フェルン「もう気にしたら負けです。」

フリーレン「休憩しよう。」

三人は窓際の席に案内された。

紅茶が運ばれてくる。ティーポットから立ち上る湯気。

店内には静かな音楽が流れていた。

フリーレン「いい香り。」

フェルン「先生、今日は紅茶なんですね。」

フリーレン「たまには。」

ほどなくして、三段のティースタンドが運ばれてきた。

上段にはケーキ。

中段にはスコーン。

下段にはサンドイッチ。

フリーレンはスコーンを手に取る。

一口食べる。

フリーレン「おいしい。」

店員が小さな器を差し出した。

店員
「クロテッドクリームでございます。」

フリーレンは器を見つめる。

フリーレン
「これ、バター?」

フェルン
「違います。」

シュタルク
「先生にも知らないものあるんだな。」

フリーレンはたっぷり塗って食べる。

しばらく黙る。

もう一口。

さらに黙る。

フェルン
「どうですか。」

フリーレン
「危ない。」

シュタルク
「何が?」

フリーレン
「これを知ると、普通のスコーンに戻れなくなる。」

フェルンも一口食べる。

静かにうなずく。

フェルン
「……危ないですね。」

シュタルクも食べる。

シュタルク
「ほんとだ。」

三人はしばらく無言で紅茶を飲む。

店内には穏やかな時間だけが流れていた。

店を出ると、フリーレンが満足そうにつぶやく。

フリーレン
「今日は、おいしい寄り道が多い一日だった。」

「図書館」

フリーレン「寄ろう。」

シュタルク「先生の目が輝いた。」

館内は静まり返っていた。

木の本棚が規則正しく並び、紙の匂いが漂う。

フリーレンは迷うことなく奥へ歩いていく。

フェルン「目的の本があるんですか?」

フリーレン「ない。」

シュタルク「ないのかよ。」

フリーレンは一冊の本を手に取る。

『世界のパン窯』

静かに棚へ戻す。

次の一冊。

『全国喫茶店紀行』

シュタルク「……。」

フェルン「……。」

フリーレンは表紙を見て、小さくつぶやいた。

フリーレン
「デンケンに教えてあげよう。」

シュタルク
「また喫茶店か。」

さらに歩く。

『魔法使いでもわかるコーヒー入門』

『スコーンの歴史』

『日本のコンビニ40年史』

シュタルク
「先生。」

「最近の旅の影響、受けすぎじゃないか?」

フリーレン
「旅をすると、読みたい本も変わる。」

フェルンは料理の棚へ向かう。

一冊の本を開く。

『家庭で作る本格ピザ』

しばらく眺めてから、本を閉じた。

フェルン
「……リヒターさんなら、この本を書けそうですね。」

シュタルク
「もうピザ職人扱いなんだ。」

そのとき。

館内放送が静かに流れる。

「まもなく閉館時刻です。」

フリーレンは借りる本を一冊だけ選んだ。

題名は、

『寄り道のすすめ』

貸出手続きを終え、三人は図書館を出る。

夕暮れの風がページを一枚めくった。

フリーレンは本を閉じて微笑む。

フリーレン
「本も旅も。」

「寄り道が、一番記憶に残る。」

少し歩くと、夜道の向こうにオレンジ色の看板が見えてきた。

吉野家。

シュタルク「今日はここで決まりだな。」

フェルン「ちょうどいい時間です。」

フリーレン「入ろう。」

三人はカウンター席に座る。

店員がお冷やを置く。

店員
「ご注文をどうぞ。」

シュタルク
「牛丼大盛り!」

フェルン
「牛鮭定食をお願いします。」

店員はフリーレンを見る。

フリーレンは少し考えたあと、落ち着いた口調で言った。

フリーレン
「牛丼並。」

一拍置く。

フリーレン
「つゆだく。」

さらに一拍。

フリーレン
「ぎょく。」

店員は慣れた様子でうなずく。

店員
「かしこまりました。」

シュタルク「先生、『ぎょく』って何?」

フリーレン「生卵。」

フェルン「ずいぶん自然に注文しましたね。」

フリーレン
「昔、ヒンメルに教わった。」

シュタルク
「ヒンメル、何教えてるんだよ。」

しばらくして牛丼が運ばれてくる。

フリーレンは、まず何もかけずに一口。

小さくうなずく。

次に、ぎょくを割る。

黄身をそっと牛丼へ流し込む。

七味を少し。

最後に紅しょうがを控えめに添える。

シュタルク
「作法でもあるのか?」

フリーレン
「ある。」

「人によって違う。」

フェルン
「それは作法ではありません。」

フリーレンはつゆの染みたご飯を静かに口へ運ぶ。

少し目を閉じる。

フリーレン
「つゆだくは。」

「たまに食べると幸せ。」

シュタルク
「なんか魔導書を見つけたときと同じ顔してるな。」

食べ終わるころ、店員がお茶を注ぎ足してくれた。

フリーレンは会釈する。

フリーレン
「ごちそうさまでした。」

店を出る。

夜風が心地よい。

シュタルク
「先生、ずいぶん吉野家に詳しかったな。」

フリーレン
「昔、デンケンと来たことがある。」

シュタルク
「またデンケンか!」

フリーレン
「デンケンは、ねぎだく派だった。」

シュタルク
「そんな情報いらないよ!」

夜の街道に、シュタルクのツッコミだけが響いていた。

吉野家を出るころには、街の灯りも遠くなっていた。

街道には、月明かりだけが降り注いでいる。

シュタルク
「……先生、今日は宿、ないぞ。」

フリーレンは周りを見渡す。

右は森。

左は草原。

前にも後ろにも建物は見えない。

フリーレン
「今日は野宿だね。」

フェルン
「久しぶりです。」

シュタルクは手際よく薪を集める。

フェルンが火を起こす。

やがて、小さな焚き火がぱちぱちと音を立て始めた。

三人は火を囲んで座る。

しばらく誰も話さない。

薪のはぜる音だけが聞こえる。

シュタルク
「ここ数日さ。」

「アフタヌーンティー行ったり、吉野家行ったり……。」

「旅の方向性がおかしくなってた気がする。」

フェルン
「確かに。」

フリーレン
「寄り道が多かった。」

シュタルク
「寄り道で済ませるな。」

焚き火の向こうで、フリーレンが空を見上げた。

フリーレン
「でも。」

「最後は、こういう夜が落ち着く。」

フェルンも空を見る。

無数の星が広がっていた。

フェルン
「先生。今日、一番印象に残ったのは何ですか。」

フリーレンは少し考える。

フリーレン
「デンケンが、ねぎだく派だったこと。」

シュタルク
「そこなの!?」

フェルン
「私は、リヒターさんがピザ窯を置いて帰ったことです。」

シュタルク
「俺は裸の大将だよ。」

三人は小さく笑う。

火が少し弱くなった。

シュタルクが薪を一本くべる。

炎がまた静かに大きくなる。

フリーレンは毛布を肩までかぶった。

フリーレン
「おやすみ。」

フェルン
「おやすみなさい。」

シュタルク
「おやすみ。」

虫の声だけが響く夜。

焚き火はゆっくりと燃え続け、三人は星空の下で静かな眠りについた。

ラダトーム。

三人が城門をくぐる。

すると、門番が胸を張って迎えた。

門番
ラダトームの町に ようこそ。

シュタルク
「なんか、言い方に様式美を感じるな。」

町へ入る。武器屋。道具屋。宿屋。

石畳の道を歩いていると、一人の老人が広場でうつむいていた。

老人
「ここラダトームは たくさんの人々が あつまる楽園でした。」

老人は空を見上げる。

老人
「それを まものたちが……。」

しばらく黙る。

そして肩を震わせた。

老人
「うっ うっ うっ……。」

老人は涙をぬぐうと、何事もなかったように歩き去っていった。

フェルン
「知り合いですか。」

フリーレン
「ううん。」

「でも、昔も同じことを言ってた。」

シュタルク
「何十年も泣いてるの!?」

フリーレン
「せっかくだし、お城へ行こう。」

重厚な門が開き、衛兵が槍を立てて敬礼した。

衛兵
「王がお待ちです。」

三人はラダトーム城の大広間へと足を踏み入れた。

大広間の奥。

赤い絨毯の先、玉座には王が座っていた。

王は三人の姿を見ると、静かにうなずく。

王様
「よく来た。」
「フリーレンよ。」

「そなたに頼みがある。」

フリーレン
「うん。」

王様
「りゅうおうを倒してきてほしい。」

王は真剣な表情のまま続ける。

王様
「世界は、りゅうおうによって脅かされておる。」

「どうか、その力を貸してほしい。」

フリーレンは少し考えた。

フリーレン
「分かった。」

王の表情が明るくなる。

王は玉座から立ち上がり、三人を見渡した。

王様
「頼んだぞ。」

フリーレンは静かに一礼する。

りゅうおうを倒して帰還する

王は玉座に座り、三人の姿を見ると静かに立ち上がった。

王様
「おお……。」

「無事に戻ったか。」

シュタルクは一歩前へ出る。

シュタルク
「りゅうおうは倒した。」

王はしばらく黙ってシュタルクを見つめていた。

やがて、その表情がほころぶ。

王様
よくぞ りゅうおうを たおした!

これで わが国に ふたたび平和が おとずれるであろう!

城中から歓声が上がる。

兵士たちが剣を掲げた。

兵士たち
「ばんざい!」

「ばんざい!」

王は玉座を降り、シュタルクの前まで歩み寄る。

王様
「勇者シュタルクよ。」

「そなたの名は、この国とともに末永く語り継がれるであろう。」

シュタルクは照れくさそうに笑った。

シュタルク
「勇者って柄じゃないんだけどな。」

後ろでフリーレンが小さくうなずく。

フリーレン
「でも、今回は勇者だった。」

フェルンも珍しく柔らかな表情を浮かべる。

フェルン
「はい。」

「とても格好良かったです。」

シュタルクは少し顔を赤くした。

シュタルク
「……そういうこと言うなよ。」

ローラ姫がゆっくりと歩み寄る。

ローラ姫
「わたくしをお救いくださり、そして竜王まで討ってくださり、本当にありがとうございました。」

シュタルクは慌てて頭を下げる。

王は満足そうにうなずいた。

王様
「では、盛大に祝宴を開こう!」

その言葉に城中が沸き立つ。

こうしてラダトームに平和が戻り、冒険は幕を閉じた。

フェルン
「それより先生。次はどちらへ?」

フリーレン
「そうだね。まずは喫茶店でも探そうか。」

こうして、ラダトームに平和が戻り、三人の旅はこれからも続いていくのだった。

三人がラダトーム城を出ようとした、その時だった。

城門の脇のベンチで、一人の老人が新聞を読んでいた。

デンケン

シュタルク
「えぇっ!?」

フェルン
「デンケン様。」

デンケンは新聞を畳み、三人を見上げる。

デンケン
「終わったようじゃな。」

シュタルク
「なんでいるんですか!?」

デンケン
「ラダトームの宿は朝食が良くてな。」

シュタルク
「理由になってない!」

デンケンは立ち上がり、城を見上げる。

デンケン
「りゅうおうは倒したか。」

シュタルク
「倒しました。」

デンケン
「そうか。」

それだけ言って、満足そうにうなずく。

沈黙。

シュタルク
「それだけですか?」

デンケン
「十分じゃ。」

「勝った者に余計な言葉はいらん。」

シュタルクは照れくさそうに頭をかいた。

シュタルク
「ありがとうございます。」

デンケンはフリーレンの方を見る。

デンケン
「それで、おぬしは何をしておった。」

フリーレン
「見てた。」

デンケン
「そうか。」

一切驚かない。

フェルン
「デンケン様は納得されるんですね。」

デンケン
「シュタルクには、自分で越えねばならん相手だったのだろう。」

フリーレンは静かにうなずく。

フリーレン
「うん。」

デンケンは満足げに笑った。

デンケン
「さて。」

「この城下町に、新しく喫茶店ができたらしい。」

フリーレンの耳がぴくりと動く。

フリーレン
「本当?」

デンケン
「ああ。」

「モーニングが評判じゃ。」

フリーレンは迷わず歩き出した。

フリーレン
「行こう。」

フェルン
「はい。」

シュタルク
「いや、エンディングの余韻は!?」

デンケンはシュタルクの肩を軽く叩く。

デンケン
「旅というものはな。」

「終わったと思った翌日に、また始まるものじゃ。」

そう言うと、四人は何事もなかったかのように城下町の喫茶店へ向かって歩き出した。

ラダトーム城下町。

フリーレン、フェルン、シュタルク、そしてデンケンは、目当ての喫茶店の前までやって来た。

扉には木の札が掛かっている。

『本日休業』

その横には、もう一枚。

『りゅうおう討伐記念祝賀会参加のため、お休みします。』

しばらく沈黙が流れた。

フリーレン
「……。」

デンケン
「……。」

二人とも無言で張り紙を見つめている。

シュタルク
「原因、お前らだよ!」

フリーレンは少し残念そうに肩を落とした。

フリーレン
「祝われる側って、こういう不便があるんだね。」

フェルン
「先生。」

「今さらですか。」

デンケンは腕を組み、深くうなずく。

デンケン
「祝賀会の日は、個人経営の店は大抵閉まる。」

シュタルク
「そんな知識あるんですか!?」

デンケン
「昔、一週間休みに当たったことがあってな。」

フリーレン
「私もある。」

シュタルク
「先生まであるの!?」

デンケンは張り紙を見ながら、静かにつぶやく。

デンケン
「……今日は諦めるしかあるまい。」

フリーレンも素直にうなずいた。

フリーレン
「うん。」

「お祝いの日だしね。」

そのとき、城の方から歓声が響いてきた。

「勇者様、ばんざーい!」

「りゅうおう討伐ばんざーい!」

シュタルクは苦笑する。

シュタルク
「俺たちのせいでコーヒー飲めなくなってるな。」

フェルンは少し考えてから言った。

フェルン
「祝賀会なら、お城でお茶くらいは出ると思います。」

フリーレンとデンケンの表情が同時に明るくなる。

フリーレン
「行こう。」

デンケン
「うむ。」

二人は城へ向かって歩き出した。

シュタルク
「結局、甘い物目当てか!」

フェルン
「いつものことです。」

ラダトームには、平和な笑い声がいつまでも響いていた。

ラダトーム城。

祝賀会の会場は大勢の人で賑わっていた。

料理が並び、楽団が演奏している。

フリーレンたちが入ると、兵士たちが一斉に頭を下げた。

兵士
「勇者様、お待ちしておりました!」

シュタルク
「勇者って言われると照れるな……。」

フェルン
「行きましょう。」

フリーレンも自然に中へ入っていく。

その後ろを、何事もないようにデンケンも続こうとした。

すると。

入口の兵士が、デンケンの前に槍を交差させる。

兵士
「失礼ですが。」

デンケン
「うむ。」

兵士
「どちら様でしょうか。」

一瞬、静寂が流れる。

デンケン
「……デンケンじゃ。」

兵士
「存じ上げません。」

シュタルク
「そこは知らないんだ!」

デンケンは落ち着いた様子で説明する。

デンケン
「一級魔法使いでな。」

兵士
「この世界には魔法使いがおりますので、それだけでは入れません。」

デンケン
「宿の朝食にも詳しい。」

兵士
「なおさら分かりません。」

フリーレンが振り返る。

フリーレン
「デンケン。」

デンケン
「……うむ。」

フリーレン
「ごめん。」

デンケンは少しだけ肩をすくめた。

デンケン
「祝賀会というものは、主役以外は案外入りづらいものじゃ。」

フェルン
「では、また今度お茶をご一緒しましょう。」

デンケンは穏やかに笑う。

デンケン
「それで十分じゃ。」

そう言うと、くるりと踵を返す。

シュタルク
「帰るんですか!?」

デンケン
「町も平和になった。」

「今日は宿で静かにコーヒーでも飲むとしよう。」

デンケンは手を軽く上げ、そのまま夕暮れの城下町へ歩いていった。

兵士がぽつりとつぶやく。

兵士
「渋いお方でしたね。」

シュタルク
「俺もそう思う。」

フリーレンは去っていく背中を見送り、小さく微笑んだ。

フリーレン
「デンケンらしいね。」

その背中は、人知れずラダトームの夕日に溶け込んでいった。

ラダトーム城。

竜王討伐の祝賀会。

楽団の演奏が響き、大広間には笑い声があふれていた。

兵士たちは酒杯を掲げ、町の人々は勇者の姿を一目見ようと集まっている。

兵士
「勇者様!」

「こちらへどうぞ!」

シュタルクは照れくさそうに頭をかく。

その横で、フリーレンはデザートの並ぶ机を見つけていた。

フリーレン
「プリンがある。」

フェルン
「先生、今日は好きなだけ食べてください。」

フリーレンは嬉しそうに皿を取る。

ローラ姫が歩み寄ってきた。

ローラ姫
「皆様、お楽しみいただけていますか?」

フリーレン
「うん。」

「プリンがおいしい。」

ローラ姫
「ありがとうございます。」

シュタルク
「そこを褒めるんだ。」

楽団が演奏を終えると、王が杯を掲げた。

会場から大きな歓声が上がる。

「ばんざーい!」

「勇者ばんざーい!」

シュタルクは少し気恥ずかしそうに笑った。

シュタルク
「こんなに祝われるの、初めてだ。」

フリーレンはプリンを食べながら答える。

フリーレン
「たまにはいいものだよ。」

フェルンは静かに微笑む。

三人はにぎやかな祝賀会の中で、束の間の平和な時間を過ごした。

旅立ちの日。

ラダトーム城。

王様
「そなたたちには礼を言っても言い足りぬ。」

「……ところで。」

王は一枚の古びた地図を取り出した。

王様
「東へずっと進むと、不思議な国があるそうじゃ。」

シュタルク
「不思議な国?」

王様
「魔王がおらぬ代わりに、配管工がおる。」

フリーレン
「へぇ。」

王様
「何度さらわれても必ず助けに来るそうじゃ。」

フェルン
「大変ですね。」

シュタルク
「その国、平和なのか……?」

王様
「一度見てくるとよい。」

フリーレンは地図を受け取り、何事もないように歩き出した。

フリーレン
「じゃあ行こう。」

シュタルク
「本当に行くの!?」

三人は城門を抜け、新たな世界へ向かって歩き始めた。

ラダトームの城を後にし、三人は街道を歩いていた。

シュタルク
「さて、次はどこへ行く?」

フリーレンは少し考える。

フリーレン
「今日は釣りに行こう。」

シュタルク
「今!?」

フェルン
「急ですね。」

フリーレン
「天気もいいし。」

「こういう日は釣れる気がする。」

シュタルクは思わず空を見上げる。

雲ひとつない青空だった。

シュタルク
「……まあ、魔王も倒したしな。」

フェルン
「急ぐ旅でもありませんし。」

フリーレンは満足そうにうなずく。

フリーレン
「決まり。」

三人は街道を外れ、近くの川へ向かって歩き始めた。

竜王を倒した英雄たちの次の目的地は――

世界の果てでも、新たな魔王でもなく。

よく釣れる川だった。

川辺。

フリーレンが釣り糸を垂らす。

ピクッ。

フリーレン
「きた。」

フェルン
「アジですね。」

シュタルク
「早っ。」

フェルンも竿を振る。

ピクッ。

フェルン
「ブラックバスです。」

シュタルク
「川だよな!?」

シュタルクも負けじと投げる。

シュタルク
「ニジマス!」

さらに。

フリーレン
「コイ。」

シュタルク
「ヤマメ!」

フリーレン
「ドジョウ。」

フェルン
「ウグイ。」

三人は無言で釣り続ける。

「サケ。」

「アユ。」

「ウナギ。」

「ナマズ。」

足元には魚が山のように積み上がっていた。

シュタルク
「どうぶつの森じゃないんだから……。」

フリーレン
「売ろう。」


たぬき商店。

まめきち
「いらっしゃいませー!」

つぶきち
「今日は何をお持ちですかー?」

フリーレンは大きな袋を床に置く。

ドサッ。

つぶきち
「たくさんですねー!」

袋から次々と魚が並べられる。

まめきち
「全部お引き取りします!」

つぶきち
「ありがとうございますー!」

二匹は素早く計算を始める。

カタカタカタ……。

まめきち
「全部で――」

つぶきち
「5万8400ベルです!」

シュタルク
「結構高いな!」

フリーレンは袋いっぱいのベルを受け取る。

フリーレン
「また釣ろう。」

シュタルク
「味しめるの早いな!」

フリーレン
「いい旅の資金稼ぎになった。」

たぬき商店を出る。

フリーレンはベル袋を軽く持ち上げた。

フリーレン
「旅の資金もたまったことだし。」

「次はイオンモールに行こう。」

シュタルク
「どこ!?」

フェルン
「先生、その目的地は世界観が急に変わりすぎです。」

フリーレン
「昔、ヒンメルと行った。」

シュタルク
「絶対行ってないだろ!」

フリーレン
「専門店街が広くて、一日中歩き回った。」

フェルン
「思い出まで作らないでください。」

フリーレンは何事もないように歩き出す。

フリーレン
「今日は火曜市だから。」

シュタルク
「情報が妙に具体的なんだよ!!」

三人はイオンモールを目指して歩き始めた。

イオンモール。

シュタルク
「……着いた。」

フェルン
「本当にありましたね。」

フリーレンは館内マップを見上げる。

フリーレン
「まずはフードコート。」

シュタルク
「そこなんだ。」

三人が歩いていると、

館内放送が流れる。

「ただいま専門店街ではポイント5倍デーを開催しております。」

フリーレン
「運がいい。」

フェルン
「先生、ポイントカードはお持ちですか。」

フリーレンはローブの中をごそごそ探る。

フリーレン
「……ない。」

シュタルク
「そこはないんだ。」

店員が近づいてくる。

店員
「アプリ会員のご登録はいかがですか?」

フリーレン
「お願いします。」

フードコート。

三人は料理を受け取り、席に座る。

フリーレン
「いただきます。」

フリーレンは静かにうどんを食べる。

シュタルク
「平和だなぁ……。」

フェルン
「ええ。」

食べ終えたフリーレンが立ち上がる。

フリーレン
「次は本屋。」


大型書店。

フリーレンは迷いなく奥へ進む。

シュタルク
「魔導書コーナー?」

フリーレン
「違う。」

立ち止まった先には、

『旅行ガイド』

シュタルク
「そっち!?」

フリーレンは一冊手に取る。

『全国ショッピングモール完全ガイド』

フリーレン
「……。」

フェルン
「先生?」

フリーレンは表紙を見つめたまま言う。

フリーレン
「次は、ららぽーとに行こう。」

大型書店を出る。

フリーレンは旅行ガイドを閉じた。

フリーレン
「次は、ららぽーとに行こう。」

フェルン
「ららぽーとに何があるんですか?」

フリーレンは少し考える。

フリーレン
「……。」

シュタルク
「知らないのかよ。」

フリーレン
「たぶん、お店。」

フェルン
「イオンモールにもあります。」

フリーレン
「映画館。」

シュタルク
「ここにもある。」

フリーレン
「フードコート。」

フェルン
「さっき食べました。」

フリーレンはガイドブックをもう一度開く。

フリーレン
「違いがよく分からない。」

シュタルク
「俺も。」

フェルンがガイドをのぞき込む。

フェルン
「規模は違いますけど、今日わざわざ行く理由はなさそうですね。」

フリーレンは静かに本を閉じた。

フリーレン
「じゃあ、やめよう。」

シュタルク
「決断も早いな。」

フリーレンは館内案内図を見上げる。

フリーレン
「それより、さっき見つけたアイス屋さんが気になる。」

フェルン
「それなら賛成です。」

シュタルク
「結局そこか。」

三人は、ららぽーと行きはあっさり断念し、アイスクリーム売り場へ向かって歩き出した。

フードコート横。

サーティワンアイスクリーム。

フリーレン
「ここ。」

フェルン
「先生、本当にアイスが好きですね。」

シュタルク
「さっきプリン食べたばっかりじゃ……。」

三人が列に並ぶ。

すると後ろから声がした。

日焼けした肌に派手なネイル。

金髪の黒ギャルが興味津々でフリーレンを見ていた。

黒ギャル
「コスプレやばくない?」

フリーレン
「違うよ。」

黒ギャル
「え?」

フリーレン
「エルフ。」

黒ギャル
「……。」

黒ギャルはフリーレンの耳をじっと見つめる。

黒ギャル
「めっちゃ作り込んでるじゃん。」

フリーレン
「だから本物。」

黒ギャル
「ウケる。」

そのとき店員が声をかける。

店員
「ご注文どうぞ。」

フリーレン
「ポッピングシャワー。」

フェルン
「私は抹茶です。」

シュタルク
「チョコで。」

黒ギャルは笑いながら注文する。

黒ギャル
「あたし、ラブポーションサーティワン!」

会計を済ませると、黒ギャルはアイスを受け取りながら三人に手を振った。

黒ギャル
「じゃ、エルフちゃん、またね!」

フリーレン
「うん。また。」

黒ギャルは満足そうに去っていく。

シュタルク
「……普通に帰ったな。」

フェルン
「先生、また友達が増えましたね。」

フリーレン
「アイス好きに悪い人はいないからね。」

三人はアイスを片手に、ゆっくりと店をあとにした。

カラオケ。

イオンモールを歩いていると、

シュタルク
「あ。」

フェルン
「カラオケですね。」

看板には大きく、

『カラオケ』

フリーレン
「入ってみよう。」


個室。

店員がリモコンを置いていく。

店員
「ごゆっくりどうぞ。」

ドアが閉まる。

シュタルク
「何歌う?」

フリーレンはリモコンを操作する。

画面に表示された。

『勇者』

イントロが流れる。

フェルン
「先生、お上手ですね。」

歌い終える。

91点。

シュタルク
「さすが本人。」

フリーレンはもう一度リモコンを手に取る。

シュタルク
「次は?」

画面に表示された。

『勇者』

シュタルク
「また!?」

フリーレン
「これしか知らない。」

二回目が終わる。

92点。

フリーレン
「少し上がった。」

三回目。

『勇者』

シュタルク
「他の曲覚えようよ!」

フリーレン
「この一曲を千年歌い続けるのも悪くない。」

フェルン
「先生らしいですね。」

部屋の外を通りかかった店員が、小さくつぶやく。

店員
「また『勇者』の部屋だ……。」